==================================================== こえせん♪ボイスドラマ Act.6 【 リバイブ・カウンセル 】 ※原作:篠村鳴 ==================================================== << 出演 >>  強気な女性:今昔都(みやこさん) 死神   :篠村鳴(死神君) (声のイメージは声優様にお任せ!) ▼台本ここから▼ ==================================================== (人ごみ:ざわざわ) (足音:コツコツコツ……) ■女 うふふ。とうとう私も、結婚か〜。 明日(あした)の結婚式、ちょっと緊張するけど、楽しみだな〜。 (車のクラクション:プップー!) ■女 ……え? (衝突音:ガシャーン!!) (少し間を空けて。目覚まし:ピピピピピ……) ■女 ……はっ!?(ガバっと目が覚める感じで) ……はぁ、はぁ、はぁ。(ちょっと息切れ) こ、ここは……? 私の、部屋……? あれ? 私、なんでここに……。うぅ、よく思い出せない……。 ■死神 おはようございます。 ■女 うわぁ!! ■死神 大きな声を出さないでください。 びっくりするじゃないですか。 ■女 あ、あ、あ、あんた誰よ!? ■死神 失礼、申し遅れました。僕は「死神」と申します。 はじめまして、みやこさん。 ■女 しに……がみ? ■死神 そうです。あなたのカウンセリングにやってまいりました。 ■女 カウンセリング? ■死神 ええ。ここは生と死の狭間(はざま)の世界。 今のあなたは、魂のみの存在となっています。 ちなみに、この世界は人それぞれ、あり方が違いまして その人の記憶によって、一番慣れ親しんだ空間が形成されるのですが…… ■女 ちょっと待てぇい!! ■死神 なにか? ■女 「なにか?」じゃないわよ! のっけからよく分からないことを ごちゃごちゃと! なんなの? なにかの設定なの? それになんで私の名前知ってるのよ、気持ち悪い! バカ! 変態!! ■死神 なんで悪口!? ■女 あ、わかった! 泥棒? 泥棒なのね!! 最近被害が多いって聞いてたけど、まさかうちを狙ってくるなんて! ■死神 いや、あの、少し落ち着いてください。 僕は死神で、あなたのカウンセリングを…… ■女 うるさい! 犯罪者! ふっ。でも残念でした〜!! 明日(あした)の結婚式の費用で、貯金も全部使っちゃたんだから! 泥棒するお金なんてこの部屋のどこ探したって一銭もな……あっ! ■死神 あ〜、こほん。(咳払い) 割と重要なことに、ようやく気が付いたようですね。 ■女 タンスの奥にヘソクリ隠してたの忘れてた!! ■死神 いや違うだろ!! ■女 割と重要なことだと思ったけど。 ■死神 知らねぇよ!! ……そんなことより 明日(あした)、なにがあるんでしたっけ? ■女 明日(あした)? ……あ、結婚式。 ■死神 そうです、結婚式を明日(あす)に控えた今日…… ご自分の身に何が起きたのか、心あたりはありませんか? ■女 え、ちょっと待って! そ、そういえば…… 確か、結婚式の前日は実家で過ごそうと思って…… 家に帰ってる途中で、急に歩道に車が突っ込んできて……はっ! ■死神 思い出しましたか? ■女 私……車にひかれた? え? でも、そんな…… ■死神 つい数時間前のことです。あなたは車にひかれました。 そして救急車で運ばれ、緊急手術が行われたんです。 ■女 う、うそ! だって、ここは私の部屋だし…… 体だってこの通り、ピンピンしてるし…… ■死神 だからさっき言ったでしょう。 今のあなたは魂だけの存在で、この世界は あなたの記憶によって形成されているんです。 ■女 あ〜、えっと……死神君、だっけ? 仮に、一万歩くらい譲って、あなたの言うことを信じるとしても ここがその「なんとかの世界」っていう証拠はあるの? ■死神 はぁ……。 言われなくても順を追って説明するつもりでしたよ。 それでは、これを見てください。 (テレビが点くような効果音:ブーン) ■女 わっ! いきなり部屋が暗くなって、壁に映像が! プロジェクターも無いのに、どうやって出力してるのかしら? ■死神 ほんとマイペースだな、おい! 映像の中身を気にしろ! 中身を!! ■女 ん……これ、病院? ベッドに寝ているのは、私? あ! お父さん、お母さん! それに…… ■死神 あなたが明日(あす)結婚するご予定の、彼氏さんもいらっしゃいますね。 ■女 そうよ……私、明日(あした)結婚するのよ!? ああ、でも、こんなことって……ま、マジなの? ■死神 大マジです。見ての通り、あなたは死にかけています。 放っておけば、あと数時間の命でしょう。 ですから、このままあの世に行かれてしまう前に「思い残し」がないよう カウンセリングを行うのが、僕達、死神の役目なんです。 ■女 そんな……そんなこと言われたって…… 思い残してることなんて、山ほどあるわよ! な、なんとかならないの? 生き返る方法とかないわけ!? ■死神 一応、ひとつだけ、あるにはあります。 ■女 え!? な、なに!? ■死神 どうしても生き返りたいという強い意思があれば 生き返ることができることもあります。 ■女 なんだそんなことか! はいはい! あるある〜! 私、結婚したい!! 結婚して、幸せになりたい!! だから生き返らせて!! ■死神 ……はぁ。そんな軽い感じでは、無理ですね。 もっとこう……ぐわぁ! っと湧き上がるものでないと。 ■女 今まで丁寧だったのに、いきなり抽象的な表現をしてきたわね(汗) でも、そんなこと言われたって……私はどうしても彼と結婚したい! この気持ちじゃ足りないっていうの!? ■死神 その程度では全然足りません。 そんなに簡単に生き返れたら、誰も苦労はしませんよ。 あと、一応言っておきますけど、たとえ生き返って 今の彼氏さんと結婚したとしても、たぶん幸せにはなれませんよ。 ■女 え? ど、どういうこと? ■死神 彼には、あなたに言えない秘密があります。 ■女 秘密? はっ! 何言ってんの! 彼が私に隠し事なんて…… ■死神 あなたが結婚したいと言っている彼……浮気してますよ。 ■女 ……え? ■死神 だから、このまま生き返っても良いことはありません。 あなたにカウンセリングが必要だと判断されたのはその為です。 ■女 ……。(怒っている感じで沈黙) ■死神 未練のあるまま、あの世に行くのも、すっきりしないでしょう? それでは、気を取り直してカウンセリングの続きを…… ■女 ちょっと待てぇ〜〜い!! ■死神 なにか? ■女 その話、詳しく!!(息をあらげて) ■死神 詳しく、と言われましても……。 ■女 あんたの知ってること、全部吐きなさい!! ■死神 うっ! な、なんて怖い顔をしてるんですか(汗) ■女 さもないと、このまま死んであんたを呪ってやるわ!! ■死神 えええ〜(汗) とんだとばっちりですね。 はぁ……わ、わかりましたよ。……え〜っと? その浮気相手とは、1年前から付き合っていたこと、とか? ■女 1年前!? ■死神 その人は、みやこさんより3歳年上なこと、とか? ■女 年上!? ■死神 「結婚しても、ちょくちょく会おうね」と約束していたこと、とか? ■女 ちょくちょくぅ!? ■死神 あとは……あんなことや、こんなことも……。 ■女 ……な、ななな、なんてこと!! 1年も前から、3つも年上のオバサンと、彼が浮気してたってぇ!? しかも結婚してからも堂々と会う約束をしている、だとぉ〜〜!! ■死神 あの……みやこさん? ■女 ああ〜〜!! もう! あったま来た!! ……死神君、私、生き返りたい理由がはっきりしたわ! ■死神 ……と、言いますと? ■女 あの浮気野郎を一発ぶん殴る!! ■死神 ……は? ■女 そんな話聞いて、おちおち死んでいらるかっての!! エグイの一発かましてやらないと、死んでも死に切れないわ! ■死神 そんな理由かよ!! ■女 マジであいつ許さない!! 泣いて謝らせてやるわ! ぐぬぬぬぬ……って、あれ? なんか体が薄くなってるんだけど!? ■死神 まさか、そんなことで? ■女 なになに!? どうなってるの、これ!? ■死神 どうやら、魂が体に帰ろうとしていますね。 かなり強い意思でなければ、こうはならないのですが……。 ■女 そ、それじゃ、私……!? ■死神 みやこさん、どうやらあなた、生き返ることができそうですよ。 ■女 おお! ほ、ほんとに!? ■死神 彼氏を一発ぶん殴る、ですか? ……あはは! あなたにとって、生き返るには十分な理由だったみたいですね。 ■女 あ〜、そ、そうなの、かな? ■死神 結局、まともなカウンセリングはできませんでしたが…… 結果的に僕の役目は果たせたので、良しとしましょう。 残りの人生、せいぜい幸せになれるよう、頑張ってください。 ■女 死神君……。そっか、うん、わかった! 私が幸せを掴むところ、ちゃんと見といてよね! ■死神 はい。くれぐれも、もう来ないでくださいよ。 ■女 うん、ありがとう! それじゃ! ■死神 ええ、さようなら。 (現実に戻る感じで何か効果音) -------------------------------------------- (病室、心電図の音:ピ…ピ…ピ…) ■女 う……あ……お、お父さん、お母さん? ごめんね、明日結婚式なのに、心配掛けちゃったね。 あ、ちょっとあなた? ……退院したら、大事な話があるから 覚悟しときなさいよ! (気がついたばかりなので、全体的にうつろな感じで) (最後は弱っているけど強気な感じで) -------------------------------------------- ■死神 はぁ〜。今回は変な人の担当になってしまいましたね。 ま、本当のことを言うと、彼氏に浮気相手なんていないんですけど。 彼女の性格なら、ああ言ったほうが生き返るための強い意思を 持てるとふんだ僕の「読み」は、どうやら正しかったようですね。 ……さて、それでは今日はもう一件、 次のカウンセリング相手のところに行きますか。 <END>